「新新新々エスメ、デビュー戦!!」
1月。キーウエストレースウイークが終わり、葉山で1泊の後そのままニュージーランドの家に戻ってきて原稿を3本入稿して……一段落。
今年のニュージーランドの夏は寒いです。
っつーところで、キーウエストのまとめ。
今年は久々の新艇、クラブスワン42(以下CS42)となった<エスメラルダ>チーム。
CS42とは、ニューヨークヨットクラブが新たに採用したワンデザインクラスでクルージングもできるクラブレーサーです。ということで、基本的にはアマチュアが乗るべき艇種なわけです。
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1月といえばAcura KeyWest RACE Week。多くの米国ヨット業界の人達はニューポートやらアナポリスやら北部に住んでいるわけでして、寒い冬はなんといっても常夏のキーウエストってわけです。
今年も半袖短パンの陽気でした。たまに寒い年もあるのですが。やっぱ北半球なもんで
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が、今回の<新エスメ>はその2号艇であり当然ながらワンデザインでレースをする事はできません。全艇出てきても2隻しかないんだから。で、IRCでのハンディキャップレースという事になります。
ワンデザインクラスといっても、やっぱりハンディキャップレースに出ることも多く、特にこのクラスはグランプリ色は薄いのでそのあたり(IRCでも競争力はあるのか)は艇種が人気を得る際の重要な要素になります。で、数が増えればワンデザインも盛り上がる……と。
この艇種を買おうと思っているオーナーさんにとっては、そこんとこものすごく興味があるわけで、クラス自体の宣伝の為にも今回はCS42がIRCのレースでも勝てる事を証明するという任務を負った<エスメ>チームであります。
なわけで、今回はすっかりCS42という艇種の広告塔みたいな感じのキャンペーンになりました。
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今回借りていた別荘。10日間で約100万円……と聞くと「えーっつ」と思うでしょうが、8人寝泊まりしてましたから、意外とお得。
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エスメラルダ海外遠征チームの中心はやっぱりケン・リードです。
すでに40隻近くのバックオーダーを抱えているこの艇種。って事は、この後少なく見ても20セット以上はワンデザインのセールが売れるという事ですから、ケン・リード始め、アンドレアス・ジョセファンらノースセールのスタップにとってはセール開発とそれに伴うチューニングガイド作りは重要な作業です。
当然ながらレースの勝敗もセールの売れ行きに係わってくるわけですから、必死です。
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ベランダから庭を見渡す……って、それほど広くはないんですけど。このあたりの貸別荘はみんなこんな感じ。池みたいなプールも付いてまして。で、繁華街やマリーナまでは歩いてすぐと便利です
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今回用いたメインセールは、アンドレアス(通称AJ)がデザインしたカナダロフト製。で、これが第3世代のデザインなのだそうな。ほぼ完成型で、小さな改良を加え(レース中にバテンの長さを長くしたり小改造が施された)第4世代として商品化するんだそうな。
ちなみにAJは御歳56才。体重200kgはありそうな巨漢です。僕は今回初めてご一緒したのですが、ただのおっさんかと思っていたところ、レガッタ中に参加している有名セーラーを集めてカンファレンスがあり、AJが司会者でした。有名なおっさんだったのね。
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なによりこの家、無線LANが繋がっているところがミソ。2階の方が電波が強いので、うーん、近所の家のが入っちゃってるのかなぁ。
とにかく家中でインターネット使い放題です。ベランダでスカイプ使って日本と完全無料電話中のイゲイちゃん
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タクティシャンには、やはりノースセールで働くブラジル人ロドリゴ。トーベン・グラエルのクルーでスター級に乗っていたんだそうな。ちょっとトボケタところがあるホンワカしたいいアンチャン。
ジブトリマーは、サザンスパーのブライアン・フィッシャー。<エスメ>はホールスパーなんですけどね。来てくれました。真面目な好青年という感じではあるが入れ墨入り。いえ、話しをするとやっぱり好青年なんですけど。
ピット&ナビはオッカム社のラット・スピニー。こちらもベテラン。インスツルメンツ屋というのは大型艇ではつぶしがききますね。いろんなチームのキャンペーンに加わってきたもよう。
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キッチンがついている所もいいですね。夕食は外に食べにいくのですが、朝とか、レース終わって帰ってきてちょっとイッパイやるなんて時に良い感じ。コバは調理師の免許ももっているのです。
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マストハンドはボートキャプテンのベン・バードウエル。28才。海兵隊にでもいたのかね、ってくらいストイックでフィジカルな青年です。この艇種はセールがデカイのでパワフルなマストハンドは非常に重要。良い仕事します。
バウは伊藝徳雄。ソアに小林正季。コクピットには吉田学。と、昨年のJ24<エスメ>で一緒に乗っていたメンバーです。このへんはもう古いつきあいなのでオイラとしてはとても気が楽でした。他の外人はみんな初顔合わせだったんだけど。
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でもって、こんな感じ。
なんと申しましょうか、外国のスーパーにはちょっと試してみたい食材が結構あるもので、とくに酒の肴系に多いのですよ。
写真左がAJさん。奥にいるのが呼んでもいないのに遊びに来たケンタ。フロリダにいた頃の友人のヨットでキーウエスト参戦。いや、PHRFクラスで結構良い成績だったらしい。艇名忘れたけど。
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さて、レースの方はといいますと。IRCハンディキャップ下においてこの船がどのようなパフォーマンスを見せるのか。IRCの中身はブラックボックスでして、クラス2号艇のエスメが出場するこのキーウエストレースウイークがこの艇種にとって初めてのレース。蓋を開けるまでどうなるのかさっぱりワカラナイという状態なわけです。ケンも今回ほど何もアイデアがないレースも珍しいと言ってました。
で、実際蓋を開けたらどうだったのかというと。
初日はクラスブッチギリでトップを2回。もう後ろの方はどれがどの船だかワカラナイ状態ですが、「勝ったんじゃないの?」という気楽な状態で宿舎に帰ったところなんと2レースとも2位。(すぐにレース結果が分かるところがいいですけどね)
「ナヌー?! トップは誰よ」と見ると<Spirit of Malouen3>。そんな船いたっけ? ん? フランスチーム? 艇種は? Sinergia40?
聞いたことないんですけど。
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居心地のいい宿舎とはうってかわって、艇内はこんな感じ。クルージング仕様っていっても、レースに使うとキャビンの中はセールであふれかえります。真ん中に鎮座しているテーブルが邪魔。
オーナーは、ESPNのインタビューに「クルージングが好きです」とか堂々と答えていたけど、クルージングしてるの見たこと無いんですけど。
で、写真はせっまっくるしい所に潜り込んでマストステップの調整をしているケンとヨシダ
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2日めは、朝から目をこらして捜しましたよ<Malouen3>。ああ、あれかぁトップサイドにビーバーの絵がでかでかと描いてある。ハルにあるのはスポンサー名で艇名なんて書いてないし。セールナンバーも白いから読めないじゃん。
なんでもIMSではかなりの成績を残した艇種であのボテイン・カーキーク(今の箱形IMSの設計者)の設計だと。ボテイン版ファースト40.7って感じ? で、IRC用にキールを改造しての出場だとか。
なにしろ、同じくらいのサイズの船なのに一緒にスタートしてフィニッシュで6分は離さないと勝てないわけで、6分っていったらもう見えないですよ。
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これがSinegia40。なんでもスポンサーは紙のリサイクル会社らしいが、「ビーバーって木を食うんだろ? なら森を救うためにはビーバーは殺せ!!」と、ライバルのビーバー艇に対して自然保護の観点から懐疑の念をいだくエスメクルーの面々。
いやー、なにしろシブトイライバル艇でした。
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とはいえ、広告塔としての使命を負い、米国一の名門ニューヨークヨットクラブの名誉をかけての出場であるエスメチームは激走しましたよ。軽風の中を。
なんつってもマストヘッドのゼネカーはデカイ。2メートルはあろうかというガンポールも相まって、IMSでいったら50ftクラスのセールみたいな感じ。
淡々と、1秒もロスする事無く走るべく頑張りましたよ。
で、2日めは1位-1位。敵はこの日3位-2位と来たもんで逆転完了。とはいえ、3日めは2位-1位とアイコとなり、なかなか突き放せません。新聞(レガッタ中は毎日新聞が出る)によれば、敵は医者、体育教師、セールスマン、そして大工といったアマチュアチームなんだそうな。でもって、「(エスメのような)プロフェッショナルチームと互角に戦えてウレシイ」「10〜12ノットの海面を想定してオプティマイズしてあるので、チビシイ」などと言っている。
そんな事いったら、ワタシラ、オプティマイズなんでさっぱりしていませんよ。レース前に走ったの5日間くらいだし……。
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5日間良い天気でした。風も10ノット前後と手頃。
海面は戦略的にはなかなか難しく、でもそのへんはロドリゴが頭をひねればいいので、デッキ人足のオイラとしては軽風は大歓迎。メデタシメデタシ。
さあ、スタート間際……のショットです。
で、なんだか飲み食いしている写真ばっかじゃねーか、というご不満に答えて、動画がアップされています。
http://www.jobsonsailing.com/
左下の方の、Online Video Reportsの中の「IRC3 Out Takes」は、レース2日めにビデオカメラマンが乗り込んで来て撮ったものです。レース中にこんな事してていいのかな?って感じではありますが……
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なにしろ敵はしぶとい。アマチュアといってるけど、かなりうまい。他の艇に頑張ってもらって間に入ってもらわないと。
というところで、4日め、1位-1位と踏ん張るものの敵も2位-2位なのでその差はわずか2点。うーん、ここで計算計算。
捨てレースがあるので、最終日2位以下になってもこちらはそれが捨てレースになり、敵はどう頑張ってもこの2点差を覆す事はできず。ここで最終日を待たずに優勝がきまりました。メデタシメデタシ。……って夕飯食いながら気が付いたオイラ達。
なんだか接戦なんだか余裕だったんだかワケがワカラナイ5日間でした。
船はこの後すぐに日本に持って帰り、2007年は日本でレース活動を行う予定です。
って、IRCのレースってあるの?
(2007/2/7記)
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こちら、カメラマン矢部さんが撮ってくれた写真。
最終日は勝ちが決まっていたので、カメラマンオンボードで走りました。で、帰りがけに記念撮影……と。その他の矢部さん撮影の写真は、イゲイのホームページに出ています
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