こちらが、ジョーイ・アレン。 |
「超一流の男達」 ニューポートゴールドレガッタでは、<ブラックマジック>のジョーイ・アレンが、次の週のニューヨークヨットクラブのレガッタでは、<スターズ&ストライプス>のジョージ・ナントカ(すんません、名字聞かなかった)が、新<エスメラルダ>のバウマンを勤めました。 いやはや、彼ら一流がバウをやってくれると、マストもピットもホントに楽。 だいたい、後ろのほう(ヘルムスマンやらタクティシャン)ってのは、タイトなレース展開になってくると、前の方の事まで考えてくれないですからね。 若いバウマンだと、ちょっとトッパーを戻しに行こうと立ち上がると「今行くな!!」なんて怒られて、でも結局は最後に時間がなくなってトチ狂うと、こういうダンドリになるわけです。 ところが、大物バウマンになると、立場は逆転。自分の好きなタイミングで動くので、余裕のダンドリになるわけですね。 結構見ていると、「今やらなくても……」なんて思うときもあるんだけど。 |
昔、キーウエストで<エスメ>のバウマンを勤めていたゴーディーは、まだ若かったけど95年のヤングアメリカのバウマンだった男。 マーク5艇身前くらいになって急に変更になったジャイブセットを見事にやり遂げ「ノーって答えはないのさ」って言ってたのを聞き、一流は違うなと思ったもんです。 でも今回、超一流になると、できないことはしっかりと断るのであるなぁ。ってのを感じましたね。できないこと、ってよりも、リスクの伴うアクションは、っていった方がいいかな。 一度はジョーイが、ジャイブセットのコールに、「ケニー・リード、もっと早く言ってくれ」と言い返して断っていた。たぶんゴーディーだったらやっちゃていたかもしれないようなタイミング。でも間に合わない危険性もあるわけですよね。 ジョージも、下マークで、アーリーポートか、フロートオフかのオプションで用意していた我々に、後ろからの「ジャイブしてからスターボードロップ」のコールが。 するとジョージは、「できねぇぞ、ケニー」と断っていたっけ。 僕らだけだったら、そんなこと言えず、で結局失敗しちゃってると思うんですけどね。 結局は見事にフロートオフを決めて、 「な? この方が楽でいいんだよ。ジャイブなんかしてたら間に合わないもんね。ポール上げたり下げたりさぁ。早いとこ終わらせて、ハイクアウトしてる方がいいのさ」 とウヒウヒ笑っていた。 僕らに対する指示はしっかりしてくれるし、これですね、超一流は。 |
こちらは新<エスメラルダ>進水式の一こま。 なにもデッキでゴルフせんでも……の図。 手前のグラサン男は、造船所の社長、エリック・ゴーツ氏。 |
「伝説の男達」 ジョーイ・アレンという人はホントにスゴイバウマンで、これは、世界中で認めているところ。 どういう風に凄いのかというと、気合いが違うのね。 特に動作が速いわけでもない。自分でも「もう歳(42才)だからね」といつも言っているけど。正確な作業と、とにかく気合いが違うのですよ。 「よーし、ジョーイがバウへ行くぞ。全員マックスハイク頼むぜー!!」と怒鳴ってからバウへ。 マストに昇るときも「ジョーイ、アップ!!」と誰にでもなく声をかけてスタコラ上がっていくんですね。 なんだか、ちょっとユーモラスでもあるんですね。真面目な顔して、素っ頓狂な事言ったりするんですよ。 前に、ギリシャからの帰り、ジョーイと同じく<ブラックマジック>のロビー・ネイスミスとボクの3人で、ホテルから早朝空港までのタクシーに乗った時の話。 後ろの席に座った二人がやおら、 「よし、ロビー、ダブルチェックだ」 「了解」 「サイフ」 「チェック」 「パスポート」 「チェック」 「チケット」 「チェック」 「ダブルチェーック!!」 と真剣に怒鳴り合っていたっけ。チト変わっているのですよ。この人達。 みんなでマイアミのレストランに行った時、大きな店だったもんで、ロビーが中で迷子になり、結局は飲み過ぎて路上でぶっ倒れ、警察に掴まって一晩留置場に入れられていたなんて事もありました。 ジョーイの話では、<ヤマハ>でウイットブレッド世界一周レース優勝した時、ヤマハ発動機のお偉いさん達と立派なレストランで会食をする事になったんだそうな。 ずらっと並んだ偉い人達の前に、これまたクルーも全員ずらっと並んで。でもロビーだけが現れない。 とりあえず、食事を始めようとしたら、部屋のトビラがスッと開き、警察官に両側から抱きかかえられるようにしてロビーが現れたんだそうな。 なんでも、線路をとぼとぼ歩いていて捕まったんだって。 ハワイではジョーイ・アレンがバウを、ロビーがジブトリマーと担当する予定。 またまた面白いことになりそうです。 (2000/6/14) |