-->
 今、本書いているんですけどね。その一部。馬で釣りに行く話。

 僕とアツシは、オークランドから車ぶっ飛ばして5時間、釣りの基地ムルパラの町にやって来た。何日かこの町(っちゅうか村)で釣り惚けた我らは、某月某日、さらに奥地に向かったのであった。

「馬は気高いか?」

 僕らはムルパラの釣りガイド、ピーター・ヒルと共に村のボスの家に行った。道行く人に「キオラ」とマオリ語で挨拶するピーター。まさによそ者御一行という感じである。
 見渡せば、そこいら中が牧場で、元気の良さそうな馬がすたこらさっさと行き来しているではないか。今日はここから馬に乗ってファカタネリバーに降り、でっかいトラウトを釣る予定なのである。
 この国は牧場だらけなので、車で道を走っているだけでも牛や羊を見ることができる。時には牛の群が道路を横断していて、なかなか車が通れないこともある。
 彼ら彼女らは例外なくうつむいて草を食べている。全員が一日中食べている。食べていない牛や羊を見つけるのは難しいくらいである。
 そんなに食っては肥満になるよ、と言ってやりたいが、彼ら彼女らはベジタリアンなので気にしなくてもいいのかも。飼い主の方も「できれば肥満になって欲しい」と思っているのかもしれないしね。
 そんなわけで、牛も羊も、ひがな一日うつむいて黙々と草を食っているのである。君たち、それで人生悔いはないのか?

 ところが、馬は違う。気高くさっそうと立ち尽くしたり、早足で歩いてみたり。たてがみなんかなびかせちゃったりして。
「私ら格が違うもんね」
と主張しているようである。
 なにしろ、羊や牛は丸裸に毛刈られちゃったり、乳絞られたり、ひどいのになると殺されて食われちゃうわけであるから、家畜仲間にあって馬の余裕、優越というものも頷けるのである。さっそうとしているのも、伊達ではないのだ。
 ちなみにこちらでは鹿も食用として飼われているが、どうも馬的食生活をしているように見受けられる。あんまりうつむいて草食ってない。
 どうやら、食われちゃうのか乗られちゃうのかという運命と食生活はあまり関係なかったようである。すいません。

2.JPG (172964 バイト)

「始めての馬ざんす」

 

川の目次へ戻る 山の目次へ戻る 海の目次へ戻る トップの目次へ戻る トップページへ戻る